設立から高級車ブランドとして名高い「キャデラック」!
その歴史をご存知ですか?キャデラックの歴史は人の歴史と密接に関わっていました。
その関わりを紐解くことで、よりキャデラックの魅力を知ることができるはず!
今回は、現在も世界中で愛され続けているキャデラックの歴史について、歴代車と共に詳しく解説していきます。
目次
[キャデラックの設立]
キャデラックの創始者はヘンリー・マーティン・リーランド。
リーランドはアメリカのバーモント州に生まれ、繊維工場で見習いとして働いていた最中、南北戦争が始まったのを機に、兵器の製造をしている会社へと職を移します。
当時、その場所では時代の先駆けともいえる精密工作が行われていました。
その後、友人と一緒に工場を立ち上げて、精密工作機械の製造と販売を手掛けるようになります。
以来、精密工作機械の分野で活躍するようになったリーランドは、高級車を世に出したい出資者の目に留まり、チーフエンジニアとして車の製造を任されることに。
当時の出資者はリーランドが作ったエンジンの精密さに大変驚いたとか…
当初は自分の名前を社名にするように勧められたリーランドですが、それを断って「キャデラック」に。これはデトロイトを開拓したフランスの貴族の名前からとったものです。
キャデラックは1902年に設立し、以来アメリカ国内で高級ブランド車としての地位を確固たるものとしていくこととなります。
[新ブランド「リンカーン」の設立]
創設者のリーランドは、精密工作機械の製造に関してアメリカ国内でも有名人でした。
キャデラックを設立した年の10月には、自社の自動車として第一弾である「キャデラックモデルA」を完成させ、高品質との評価を得ます。
ベースはリーランドが入社する前に主任技術者だったヘンリー・フォードが作りました。
初めて販売した自動車でありながら、注文は2000台以上にもなったとか!しかし凄っいですね~!
性能だけではなく、デザインも可愛くてオシャレなのが特徴です。
1909年には、ゼネラルモーターズの創設者であるウィリアム・C・デュライトからの誘いを受けて、キャデラックはゼネラルモーターズと同じグループとなります。
その後もリーランドの開発はとどまる事を知りません。
1912年 モデル サーティはセルフスターティングモーターを標準装備した初めての車を開発しました。
これにより女性でが一人でもエンジンを掛けられ、自動車普及に大きく前進しました。
第一次世界大戦までその場所で責任者として活躍していましたが、1917年に航空エンジンの生産をめぐってゼネラルモーターズ側と対立して職を辞すことに。「リンカーン・モーター・カンパニー」を立ち上げて、再出発します。
リーランドがゼネラルモーターズ側と対立したのは、戦争中の軍需品製作をゼネラルモーターズが行わなかったことに愛想を尽かしたことがキッカケだといわれています。
リーランドは愛国心が強いことでも知られていて、リンカーンは航空エンジンであるリバティエンジンを作りたいとの想いから設立にいたりました。
この時も、リーランドは自分の名前を付けるように部下に勧められましたがそれを断っています。
[大統領や有名人に愛されたキャデラック]
キャデラックは1920年代にかけてアメリカの歴代大統領や王侯貴族、有名人にとても愛されて、その名を世界中に轟かせました。
ヨーロッパのロールス・ロイスやイスパノ・スイザなどと肩を並べる高級車としてブランド価値を確立していきます。
有名人たちは独自に車のボディを自由に架装して、自分だけの好みの一台にしたうえで、その豪華さを競い合うようになりました。
リーランドがモデルを手掛けた車は、最先端の技術を常に導入していることに加え、デザイン性も高く人気を集めました。
レトロ感があるキャデラック314はアメリカ大統領をはじめ、ギャング界の帝王のアル・カポネや野球界のスター、ベーブ・ルースが愛用していたといわれています。
[世界恐慌や第二次世界大戦で一時低迷]
1930年、キャデラックは乗用車向けの「V型16気筒エンジン」を開発して商品数を増やしましたが、世界恐慌が起きたタイミングも重なり、販売台数は伸び悩みました。
次第に高級車志向だった世間も変わってきて、次第に一般の人でも乗れるような乗用車が人気を集めるようになりました。リンカーンは経営が破たんし、1922年にオークションでフォード・モーターに買収されることとなります。
ですが、その後ルーズベルト大統領によるニューディール政策が導入されたのを機に、アメリカ国内の経済が上向きになります。
1930年代の後半にかけて、車の販売台数が回復。V型8気筒やV型12気筒エンジンを搭載した高級車を再度販売するようになります。
1938年 実用性を配慮し、車体後部にラゲッジルームが設けられた車、シリーズ60スペシャル
現代の3ボックスセダンの原型となったモデルでキャデラックの歴史では外せないもでるの一つですね!
好調な兆しが見えてきた最中、1939年9月に第二次世界大戦が開戦し、1941年にはアメリカも参戦することになります。
これにより、アメリカは戦時体制となり、高級車の新モデル製作は見送られることとなりました。
さらに、戦時体制で燃料の配給制が設けられ、開発した新しいエンジンも廃止に追い込まれる事態となりました。
そんな中、戦争中はアメリカ政府の常用部をはじめ、マッカーサーなどの有力者もキャデラックに乗車していたので、モデルチェンジはされていないまま、自動車の製造は行われました。
[戦後はチェンジモデルを重ねて新境地へ]
第二次世界大戦が終結してもしばらくは、戦前のモデルの車種を製造して販売していたキャデラック。
本格的なモデルチェンジは、1948年に完成し、自動車業界では初の曲面ガラスが設けられました。
ロッキードP-38戦闘機がモチーフとなったシリーズ60も、最先端なデザインが組み込まれて反響も大きく、モデルチェンジは大成功を収めました。
シリーズ60 1948年
JOHN LLOYD from Concrete, Washington, United States [CC BY 2.0], via Wikimedia Commons
モデルチェンジが軌道に乗ったころから、当時のGMの会長アルフレッド・スローン発案のコンセプトカーのデザインを組み込むことが多くなり、常に新技術を取り入れて毎年モデルチェンジの車種を販売するまでになりました。
経済も好景気となり、販売台数も徐々に増加していきます。
[高級自動車ブランドの地位を確固たるものに]
1950年代にはクロームメッキをふんだんに使用した「ダグマー・バンパー」というバンパー一体型のフロントグリルやデュアルヘッドランプなどを積極的に販売。
どれも最新技術を備えたモデルで、注目を集めました。
中でもジェット戦闘機とロケットをイメージしてつくったシリーズ62は、6メートルほどの全長とテールフィン、デュアルヘッドランプ、クロームメッキとホワイトリボンタイヤが備わっていて、大きな反響を呼び、アメリカの好景気を象徴するものとなりました。
1960年に就任したケネディ大統領のファーストレディであるジャクリーンは、ファッションをはじめ行動が注目される人物でした。
ジャクリーンからインスピレーションを受けたイタリアのデザイナー、ピニンファリーナはモーターショーで公開された自動車のデザインを手掛け、車にも「ブロアム・ジャクリーン」とジャクリーンの名前を採用しました。
このデザインモチーフは1960年代のキャデラックモデルに、数多く使用されています。
その後もキャデラックは名声を博し、世界中の大富豪やセレブ、ハリウッドスターなどが使うようになりました。
当時撮影されていた映画にも多く登場しており、時代背景にキャデラックは欠かせない存在となっていきました。
販売台数は右肩あがりで、車のデザインや性能は世界中の車メーカーに多大な影響を与えました。
[オイルショックを経て新境地へ]
その後、1970年にオイルショックの影響を受けて、低燃費に対応するようになります。
それまで販売していた高級車よりも小さなサイズで、燃費に優れたモデル「セビル」を販売します。
サイズは小さいですが、キャデラックのデザイン性を残して高級感はそのままに。
当時のキャデラックの中でも価格は最高価格でしたが、評判を集めて売れ行きも上々でした。
以来、セビルは皮素材のシートが備わったタイプや高級ブランドであるグッチをモデルに組み込んで販売するなど、形を変えて展開され続けています。
[1980年代には再び低迷も]
その後、新たな車種を多く販売しましたが、中には売上が伸びずに販売を中止したものも。
キャデラックは戦前から高級車の部品を共通してきましたが、前輪駆動モデルでのダウンサイジングは他メーカーとの差別化ができませんでした。
また、同時期にコスト削減もおこなっていましたが、結果的に品質の低下につながり、ブランドイメージが大きく下がりました。
1980年代からは、ヨーロッパの高級自動車ブランドをはじめ、ホンダの高級ブランドの「アキュラ」や日産の「インフィニティ」、トヨタの「レクサス」が市場に出回るようになってきました。
また、それまでキャデラックを購入していた顧客の高齢化もあり、経営は低迷していきます。
[ブランド再生から現在のキャデラック]
キャデラックは1988年に売上が芳しくなかった「シマロン」を廃止し、1998年には日本やヨーロッパの客層をターゲットにした高品質な内装が特徴の5代目セビルを販売。
さらに1999年にはキャデラック初のダイナミックな4輪駆動車「エスカレード」を販売して世界的なヒットへと導き、高級車としてのブランド価値を取り戻しました。
現在は新モデルを導入するのと当時に、ブルガリなどの高級ブランドとのタイアップも積極的に行っています。
また、現在はヨーロッパやロシア、中国などでシャアを伸ばしています。性能とデザイン性に優れているキャデラックは、アメリカを代表する高級ブランドとして、リードしています。
[キャデラックの現行モデル]
現在販売されている主なモデルを見ていきましょう。
SUV
中型SUV XT5クロスオーバー
Kevauto [CC BY-SA 4.0], ウィキメディア・コモンズ経由で
セダン
中型セダン CTS
© M 93 / Wikimedia Commons, via Wikimedia Commons
フルサイズセダン CT6
Mr.choppers [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons
[まとめ]
キャデラックは戦後から多くのモデルを導入し、一躍世界に名を馳せる有名高級ブランドとなりました。
かの有名なフォードやリンカーンの創設者を生み出した、親のような存在でもあります。
2009年1月に就任したオバマ大統領もキャデラックを大統領専用車として取り入れていることからも、性能が優れていることが伺えます。
時代と共に駆け抜けてきたキャデラック、次世代に向けてどんな姿を見せてくれるのか、今から楽しみですね。